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〈わがあいするしじんのでんき〉(ほい)
〈我が愛する詩人の伝記〉(補遺)
室生 犀星
「婦人公論 第四十三巻第五号」1958(昭和33)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,167 字 · 22 页
彼は酔ってしどろになって言った、おれが死んだら彼処にいるあの人、つまり室生犀星に一さい委してあるんだ、原稿の事、全集出版の事、家の事、何でも彼でも犀星がやってくれる事になっている、だからおれはころりと参ってもさばさばして死ねるというもんだ、彼は四五人先の座から、私のそばに来て坐り込んで更めてまた言った。全集がだめなら選集でも出してくれ、みんな君に委せる、表紙も君の字で書いて装幀も君の好きなようにやってくれといい、君はすでに酒は止めているが、酒友再びかえらずという奴だとか言い、多くの客の前で私は極り悪げに畏こまっていたが、全集なんてお互に出してくれる本屋があるかないかも、甚だ危ないね、その点あまり信拠しないでくれと、私は私自身の書物さえあまり売れていないのに、佐藤の全集なぞ誰が出版してくれるだろうと、変な事を言い出してくれては困ると、低い声で叱っていうと、わかっているよ、これは親類中にちょっと触れて置くにすぎないんだ、だが、一冊くらいは出るだろうから出してくれといい、一冊くらいなら出して貰うよ、東京中を駈けずり※(「廴+囘」、第4水準2-12-11)っても出して貰うよ、と、私はこの酔っぱらいを安心させて体裁をつくろうて言った。