轻松读懂日语经典作品
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われにそむく
我に叛く
宮本 百合子
「太陽」1921(大正10)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,414 字 · 59 页
ゆき子は、その場合、特別な懐しさを感じながら、手にとって、表記の真木潤一という宛名をながめた。それから、また改めて裏を返した。文句は肉筆で書かれているのみならず、「是非とも」の四字には、特に朱で二重圏点さえ打ってある。
ゆき子は暫く考えた。
「ただ、留守です、ぎりでいいかしらん……」
彼女の頭には、閃くように、電報を打とうという考がうかんだ。
「若し、帰った方がいいと思えば、便宜の汽車を見出して間に合うように戻るだろう。若し、必要がなかったら――勿論、予定の十日をいて来るだろう……」が、後の場合は、彼女に十が一も無さそうに思われた。
ゆき子は、やがて葉書を持って母の居間へ行った。彼女は、裁つもりものをしている母の傍で、相談をしいしい電文を作ろうと思ったのである。
六畳の、平床に花鳥の淡彩をかけた部屋の中は、静に落付いている。母は、懸け鏡に綺麗な耳の辺から髷の辺を照返しながら、ひっそりと地味な絹物をいじっていた。ゆき子は、入って行きながら、
「おかあさま……」
と呼んだ。
母は、やや沈んだ、併しすっかり平静に戻った顔を振向けた。
「なあに?」
「あのね、今、こんなものが来たのよ」