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われにそむく

我に叛く

宮本 百合子

「太陽」1921(大正10)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,414 字 · 59 页

青空文庫

「子供にやるんじゃあなし、いい加減で好いじゃあないか。そうそう甘やかしてどうするつもりなんだろう!」

ゆき子は、母の不快に圧せられた。彼女は、云いようない淋しい気持がしたけれども、この上再び、不愉快な亢奮を醸すことを危ぶんだ。ゆき子は、言葉少く電文を纏め書生に頼んで、最寄りの局から返信付で、×県の真木に送ったのであった。

寿賀子の不機嫌は、決してそれ限りで消えたのではなかった。

父が帰宅し、風呂がすみ、夕飯が始って皆が卓子に就くと間もなく、寿賀子は、誰に云うともなく、正面の席から、

「明日の朝、真木さんが帰って来るんですってさ」

と云った。言葉は、何でもない。が、そのうちには、今まで、賑やかにわやわやしていた口々の雑談を、ぴったり沈黙させるような一種の調子が籠っていた。

父の隣席に坐り、箸を採っていたゆき子は、思わず胸が強るような刺戟を感じた。彼女は見えない力に押されて、

「まだわかりゃあしないのよ!」

と、力強く否定した。

「どうしたんだね」

傍から、父が穏やかに振返った。

ゆき子は、沈んだ短い言葉で、午後「速達」の来たことや真木に電報を打ったこと等を説明した。