轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

われにそむく

我に叛く

宮本 百合子

「太陽」1921(大正10)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,414 字 · 59 页

青空文庫

手には、電報らしいものがある。

「来たの?」

彼女は、手を延してそれを受取ると、

「有難う」

と云う間もあらせず封を切った。おきまりの読み難い片仮名ながら、はっきりと、

「アスアサ九ジツク」

と書いてある。――

ゆき子は、我知らず次第に微笑み赧くなりながら、激しい鼓動と共に、深い溜息をついた。

「ね、おかあさま」

やがてゆき子は、強いて溢れ出るうれしさを抑えつけた明るい顔で、母に振向いた。一夜過ぎた今朝、彼女は信じられないほど、「よい母」になっていた。まるで、反動のように優しく落付いて、同時に、

「さあ、大変! 旦那様のお帰りだ」

とゆき子を揶揄(からか)ったほどの快活さまで取返していたのである。

母の好機嫌で、一層の歓びを感じながら、ゆき子は問ねた。

「おかあさま、真木が真直にこちらへ来るとお思いになって? それとも△町へ行くでしょうか?」

「分らないね。――電車の都合は△町のほうがいいんだろう?」

「それはそうよ。だけれどもあのひとは鍵を持っていないんだから、若し、あちらへ行ったら入れないわ」

「馬鹿な人!」母は笑った。「それなら、一旦こちらへ来てから、△町へ帰るに定まってるじゃあないか、確かりおしよ!」