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われにそむく

我に叛く

宮本 百合子

「太陽」1921(大正10)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,414 字 · 59 页

青空文庫

また、そういう確立を得るために、話す間も専門をする間も無いような生活をしたくはありません。――勿論、そんなのがいいって云わないとおっしゃるには極っているわ。――だけれど……」

真木は、幾度も、

「どうしたの? ゆき子」、「どうしたのだ」と云って、話を軌道に戻そうとした。けれども、ゆき子は、がむしゃらに頭からぐんぐん、ぐんぐん激情の誘うがままの所まで突進んでしまった。

「貴方は、ほんとに深く、完全に私を愛してやっていると自信していらっしゃるでしょう? だから……だから……私の感じる不満や、苦しみは、皆、私ひとりの我儘だの子供らしさだのに片づけておしまいになる。――どうしたらいいの? 段々、段々心が殺されて――どうなるの? 誰に云ったらいいの? 貴方にほか持って行きようがないのに……」

ゆき子は、丸く握りしめた両手で口を抑えながら、声を挙げて泣き出した。――

彼等の間に、こういう衝突、或は激浪の起ったのは、決して始めてではなかった。

原因は、事としては極めて些細なことが多かった。けれども、終は、いつもゆき子の気も狂うような慟哭になる。彼女は、勿論自分が激越し、正当な言葉や思考力を混乱させるのは知っていた。