轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

あるおんなのしゅき

或る女の手記

豊島 与志雄

「婦人倶楽部」1920(大正9)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,447 字 · 37 页

青空文庫

通りしなにいつもの通り一寸中を見やると、私は足が自然に引止められる心地がした。御門から二十間ばかりかなたに、あの若い淋しいお坊さんが、楓の幹に片手をかけてよりかかるようにしながら、じっと――長い間そのままの姿勢でいたかのようにじっと佇んで、こちらをぼんやり見守っていた。楓の枝葉を洩れてくる斜の光りが、お坊さんの真白な着物の上に、ちらちらと斑点を落していた。私の姿を見たお坊さんの顔は、静かに静かに、恰度風もないのに湖水の面がゆらぐように、かすかな襞を刻んでいった。かと思うと、いつしかにこやかに微笑んでいた。私の顔も知らないまに微笑んでいた。……それに自分で気がつくと、私は急に我に返ったように恥しくなって、顔を伏せたまま逃げ出してしまった。

その晩床にはいって、昼間のことを考えると、大変やさしい夢を見たような気がした。「あの年若なお坊さんの上に祝福がありますように。」――私はそうした気持ちになっていた。ああ、何ということであろう!

その翌日から、私は学校の往き帰りに、大抵日に一度くらいは、お坊さんと顔を合した。奇体にお坊さんは、私がお寺の前を通る時、庭の中に出ていた。