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せんそうはぼくをおとなにした

戦争はぼくをおとなにした

小川 未明

「童話」1947(昭和22)年2、3月合併号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,627 字 · 11 页

青空文庫

他のひとりは、また、自分の顔をガラスにおしつけて、できるだけ、よく見ようとしていました。しかし、なにをしても、キューピーには、手ごたえがありませんでした。ふたりは、これでは、こちらがばかにされるような気がして、腹立たしくなりました。

「やいキューピーのばか!」と、ひとりは、手をふりあげて、なぐるまねをして、みせました。それでも、キューピーは、だまっています。

「こら、石ぶつけるぞ!」

このとき、とつぜん、もうひとりの、男の子が、

「この、キューピー、おとなりのユウ坊みたいだよ。」と、笑いだしました。

「ユウ坊って、おりこう。」

「う、うん。」

「しょうべんたれの、うんこたれなの。」

「はっ、はっ、はっ。」

そういって、ふたりは、顔を見合って、さもおもしろそうに、笑いました。

青い空は、さわやかに、よく晴れています。深い、深い、水色がかって、たれさがるあちらには、遠く木立の枝が黒く、大きな森の、頭にさしている、かんざしのごとくみえました。そして昨夜の霜が、まだ光って枝先に凍りついているのが、日の光に、銀のごとくかがやいていました。こうして、冬の間、じっとして、眠っていた自然だけれど、もうどことなく、じきに目をさましそうなけはいがしました。