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せんそうはわたしたちからすべてをうばう
戦争はわたしたちからすべてを奪う
宮本 百合子
「現代女性十二講」ナウカ社、1950(昭和25)年12月発行
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,456 字 · 25 页
一九四六年ごろとは非常に変って来た。
これらの変化のあるものは、厚かましい公然さで自身の場所をしめて来た。またあるものは、いろいろの社会心理のモメントをとらえて、いわば三越や白木屋のマークが、いつか日本人の眼にしみこんでしまっているように、日本の人民に印象づけられて来ている。
その著しい例は日本の天皇の一族に対する日本人民の感情の導かれかたである。天皇はあらひと神ではなくて、人間の男であり、皇后、皇太子、皇女たちは、その妻や子息、息女であることがわからされた。
人々は、人間である天皇、人間である三笠宮に親愛感をもつことに馴れて来た。皇太子が、唯一の御馳走は、カレーライスだと思っているということについて、人々は小生意気で早熟な闇成金の息子たちに対するのとはちがった、ほほ笑みをもらすのである。皇后が動物園へ行って、おもしろそうに笑って象を見ている、その姿に、世間を知らないかあちゃんの、あどけなさを感じるのである。
人間になったものとしての日本の主権者一家に、みんなのもつ暖い感情があるとすれば、それは、決して頼りになる存在としての、しっかりした男同士の近親感ではない。