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せんゆう

戦友

小川 未明

「新児童文化 第4冊」1942(昭和17)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,699 字 · 8 页

青空文庫

そして、この際むしろ、描くなんかということを考えないほうがいいのだ。ただ、こうして、自然の裡にひたっていると、僕には、平時の十年にも、二十年にも優るような気がするのだ。いや、それよりも長い間、生活してきたように思える。それで、ふと戦死ということが頭に浮かんだのだ。僕が、今日にも戦死したら、あとに残った老母に、ただ一言、僕が、勇敢に戦って死んだといって、告げてもらいたかったのだ。僕の母親は、子供の時分から、僕を教育するのに、いつも、いかなる場合でも、卑怯なまねをしてはならぬといいきかせたものだ。出征する朝も、神だなの前にすわって、このことを繰り返していったのだ。今日は野原の景色が、あまり美しく見えるので、ついこれからの激戦に花と散るのでないか、と思ったよ。」

だまって聞いていた、岡田上等兵は、あっはははと快活に笑った。

「なにも心配するな。万一、おれが、武運つたなく生きて帰るとしたら、きっとお母さんに見たままを言伝する。しかしなあ小西、おれは、いつもこの隊にいるものは、生死を一つにすると思っているのだ。そうとしか考えられない。どちらが先に、どちらが後に死ぬかわからぬが、おれも生きて帰るとは考えていないぞ。