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ししょ
戦国武士道物語 死處
山本 周五郎
山本周五郎『戦国武士道物語 死處』。同一底本的分册已合并为一书。收入:死処、城を守る者。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,176 字 · 33 页
燈火の下に置かれた紙片には、左のような文言がしたためてあった。
(――予て申合せし如く、尾越どの旗挙げの儀はかたく心得申し候、援軍ならびに武具の類、当月下旬までに送り届け申すべく候、そのほか密計の条々相違あるまじく、懇ろに存じ候、小田原)
「尾越どの」とは上杉輝虎の義兄にあたる長尾義景のことで、げんざい尾越の城主として上杉家一方の勢力をにぎっている。「小田原」というのは北条氏実にちがいない。すなわち文面は北条氏と長尾義景とのあいだに交わされた密書で、義景の謀叛を北条氏が援ける意味のものである。
「父上……その密書いかが思し召しますか」
通胤は走田での出来事を手短かに語りながら、父の眼色をじっと瞶めた。……清胤は黙ってその紙片に燭の火をうつすと、燃えあがる火を見ながらしずかに云った。
「この書面、そのほうのほかに見た者があるか」
「読んだのはわたくしだけでございます」
「そうか」
清胤はふかく頷き、やがてしずかな低い調子で云った。
「尾越どのと小田原との密書が、わしの手にはいったのはこれで三度めだ」
「三度めと仰せられますか」
「小田原北条の死間(わざと斬られる間者)のたくみか、それともまことに尾越どのにご謀叛の企てがあるか、殿このたびの御出馬直前より、しばしばかような密書が手に入る……もし北条の死間のわざとすれば、上杉