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せんじょう

戦場

夢野 久作

「改造」改造社、1936(昭和11)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,769 字 · 51 页

青空文庫

私たちが今まで居た白樺の林から運び出されたものも在ったろうし、途中で死亡して直接にここに投棄てられたものも在ったろう。石油の臭気は、そんな死体の山を一挙に焼き尽すつもりでブッかけて在ったものと考えられる。

青褪めた月の光りと、屍体の山と、たまらない石油の異臭……屍臭……。

もうスッカリ麻痺していた私の神経は、そんな物凄い光景を見ても、何とも感じなかったようであった。候補生を肩にかけたままグングンとその死骸の山の間に進み入った。ガチャリガチャリと鳴る軍医大佐の佩剣の音をアテにして……。

そこは戦前まで村の中央に在った学校の運動場らしかった。周囲に折れたり引裂かれたりしたポプラやユーカリの幹が白々と並んでいるのを見てもわかる。その並木の一本一本を中心にして三方に、四五米高さの堡塁のように死骸が積重ねて在って、西の方の地平線、ヴェルダンに向った方向だけがU字型に展開されているのであった。

その広場の中央に近く、やはり数十の負傷兵が、縦横十文字に投出されたように寝転がっていたが、しかしこの負傷兵たちが、何のために白樺の林から隔離されて、コンナ陰惨な死骸の堡塁の中間に収容されているのか私はサッパリ見当が付かなかった。