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げさくしゃ
戯作者
国枝 史郎
「サンデー毎日」1925(大正14)年4月1日春季特別号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,218 字 · 21 页
「はっ」と云うと侍は、つと懐中へ手を入れたが、取り出したのは綴じた紙である。
「見るにも耐えぬ拙作ながら、ほんの小手調べに綴りましたもの、ご迷惑でもござりましょうがお隙の際に一二枚ご閲読下さらば光栄の至。……」
「へえ、こいつア驚いた。いやどうも早手廻しで。ぜっぴ江戸ッ子はこうなくちゃならねえ。こいつア大きに気に入りやした。ははあ題して『壬生狂言』……ようごす、一つ拝見しやしょう。五六日経っておいでなせえ」
で、武士は帰って行ったが、この武士こそ他ならぬ後年の曲亭馬琴であった。
「来て見れば左程でもなし富士の山。江戸で名高い山東庵京伝も思ったより薄っぺらな男ではあった」
これが馬琴の眼にうつった山東京伝の印象であった。
「変に高慢でブッキラ棒で愛嬌のねえ侍じゃねえか。……第一体が大き過ぎらあ」
京伝に映った馬琴の態度も決して感じのいいものではなかった。
さも面倒だというように、馬琴の置いて行った原稿を、やおら京伝は取り上げたが、面白くもなさそうに読み出した。しかし十枚と読まない中に彼はすっかり魅せられた。そうして終い迄読んでしまうと深い溜息さえ吐いたものである。