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うちあけばなし
打あけ話
宮本 百合子
「東京日日新聞」1937(昭和12)年2月9~11日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,441 字 · 7 页
一 講演
作家で講演好きというたちの人は、どっちかといえば少なかろう。私には苦手である。テーブル・スピーチでも、時と場合とでは相当に閉口する。昔は、大勢のひとの前に自分一人立って物をいうなどということはとても出来なかった。体じゅう熱くなるばかりで、人の顔や声がぼーっと遠のいたようになるのであった。
人前で物をいうようになったきっかけは、奇妙なことにモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)にいた時である。三月の或る記念日に、或るクラブへ行った。皆の腰かけている平土間の座席におられるものと思いこんで行ったら、その横を通りすぎて、計らずも数人の人の並んでいる演台の上へ案内されてしまった。裏のところで案内して来たひとに、私は何も話しに来たのではないんですからと再三たのむのだけれども、きっと日本の女を、皆の見えるところへ出したいと思ったのだろう。私は万策つきた形で、小高い台の上に並んでかけた。その時話していた人のその日の記念日のわけを説明する講演が終ったら、演台の下にひかえている音楽隊が高らかに、あっちの国歌になっている歌の一節を奏した。