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だきみょうがのせつ
抱茗荷の説
山本 禾太郎
「ぷろふいる」1937(昭和12)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,330 字 · 34 页
父がすぐにそれを飲んだのは仏様の罰が当たったのであろう。
君子の記憶に間違いがなければ、父は仏様から罰を与えられるような原因があったのであろうか、そういえば父が近郷近在に聞こえるほど善根を培うことに、なにか原因がありはしなかったか。祖母は実子である君子の父についてはあまり多くを語らなかったようである。それと反対に嫁である君子の母のことには毎日毎夜聞かぬ日とてないほど、数多く語ったように思う。
母は父の後妻で父とは年が二十以上も若かったそうで、顔も心も美しく、君子が生まれる前に死んだ、君子にとっては異母兄である継子をとても可愛がったということである。文字どおりの美人薄命であったのか、よはど不仕合せな目に会ってきた人らしく、ことに、父のところへくる以前に嫁たづいていた家から不縁になり、その家を追われた事情にはなみ一通りならぬ口惜しい、悲しい事情があったらしいのであるが、母はそれを一口も口には出さなかったそうである。それが、父のところに再縁して、ここを安住の地と定め、姑からは娘のように可愛がられ、夫の気にも入り、一粒種の君子を恵まれて安心しているやさき、父の不慮の死に会ったのだと言う。