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おしいれずいひつ
押入れ随筆
吉川 英治
「暮しの手帖」暮しの手帖社、1957(昭和32)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,648 字 · 14 页
ただ審査員に渡された各ミスの参考表といったようなものを見ると、趣味、教養の点では、依然、変っていない低さが感じられた。たとえば、「あなたの愛読書」という各※(二の字点、1-2-22)の記入欄などを、一べつすると、何も書き入れてないのが約三分ノ一、あいまいな答えがあとの半分、残りは、ドレス・メーキングとあるかと思うと、サマ・セット・モームだの、また、マルティン・デン・ガールと来たり、ロンドン・東京五万キロ、とあったりする。
ふるっていたのは、ただ一人だったけれど、ベスト・セラーものと書いてあった。それはまだよいが、私の愛読書としてあげてあるのが“挽歌”と“鍵”なのだ。きっとこのひとは、読んでないのだが、なにか書かなければいけないと思って、“鍵”としたのではないかとおもう。
さいごの一人がきまって、そのひとの頭上へ、真珠の王冠が飾られたのは、夜も十一時をすぎていた。さすが観衆も、終電をいそいで、広い会場は人影もまばらになっていたし、選に落ちた三十人のミスたちの面にも、いじらしくも疲れきった色がただよっていた。けれど、新聞記事などによると、落ちたミスたちにも、これが機会となって、ずいぶん諸方から良いお嫁のくちがかかるそうである。