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ごうもんのはなし

拷問の話

岡本 綺堂

「新小説」1924(大正13)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,111 字 · 16 页

青空文庫

証拠の材料も揃い、証人もあらわれて、それでも相手が強情を張っているかぎりは、ほかに仕様もないのである。

わが国にかぎらず、どこの国でも昔は非常に惨酷な責道具を用いたのであるが、わが徳川時代になってからは、拷問の種類は笞打、石抱き、海老責、釣し責の四種にかぎられていた。かの切支丹宗徒に対する特殊の拷問や刑罰は別問題として、普通の罪人に対しては右の四種のほかにその例を聞かない。しかも普通に行われたのは笞打と石抱きとの二種で、他の海老責と釣し責とは容易に行わないことになっていた。前の二種は奉行所の白洲で行われたが、他の二種は牢内の拷問蔵で行うのを例としていた。世間では普通に拷問と呼んでいるが、奉行所の正しい記録によると、笞打、石抱き、海老責の三種を責問、または牢問いと云い、釣し責だけを拷問というのである。しかし世間の人ばかりでなく、奉行所関係の役人たちでも正式の記録を作製する場合は格別、平常はやはり世間並にすべて拷問と称していたらしい。

いよいよ拷問と決しても、すぐにその苦痛を罪人にあたえるものではない。吟味与力は罪人をよび出して今日はいよいよ拷問を行うぞという威嚇的の警告をあたえ、なるべくは素直に自白させるように努めるのであるが、それでも本人があくまでも屈伏しない場合には、係り役人は高声にかれの不心得を叱りつけ