轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

りゃくだつせられたるおとこ

掠奪せられたる男

豊島 与志雄

「新潮 第二十九卷第三號」新潮社、1918(大正7)年9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,398 字 · 48 页

青空文庫

なあに今に立ち上って馳け出すんだい。」

山田と秀子とが其処に通りかかったのは、丁度小僧がそう云った時であった。その言葉を耳にすると秀子は眼で山田に相図をした。そして二人は黙って群衆に交って乞食の後からついて行った。

丁度其処は、並木の無い電車通りであった。乞食は歩道の縁を匐って行きながら、時々止った。もう可なり疲れているらしかった。雑巾みたいな汚いものを下腹のあたりから取り出して、額の汗を拭った。そして、やがて或る電柱の根本に辿りつくと、其処に臀を据えたまま動かなかった。群集は遠くから半円を作って彼を取り巻いた。彼は時々眼を挙げて人々を眺めたが、またすぐに頭を垂れてしまった。そして何やら考え込んでいるらしかった。否、何にも考え込まないでぽかんとしていると云った方が適当であった。

山田は秀子の方を顧みた。彼女は眼を光らして、じっと乞食の方を見つめていた。少し首を前に突出し加減にして、きっと唇を結んで眼を光らしている彼女の姿は、残酷なほど好奇心に満ちていた。そしてその好奇心の底から、一種の壮厳な権威が覗いていた。山田は彼女のそう云う姿を初めて見たのであった。