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たんていしょうせつのなぞ
探偵小説の「謎」
江戸川 乱歩
1 奇矯な着想「オール読物」文藝春秋、1954(昭和29)年10月号<br>2 意外な犯人「週刊朝日 推理小説特集号」朝日新聞社、1955(昭和30)年10月10日<br>3 兇器としての氷「犯罪学雑誌」日本犯罪学会、1952(昭和27)年3月復刊号<br>4 異様な兇器「読切小説集」テラス社、1953(昭和28)年11月増刊<br>6 隠し方のトリック「探偵倶楽部」共栄社、1953(昭和28)年8月号<br>7 プロバビリティーの犯罪「犯罪学雑誌」日本犯罪学会、1954(昭和29)年2月号<br>8 顔のない死体「探偵倶楽部」共栄社、1952(昭和27)年5月号<br>9 変身願望「探偵倶楽部」共栄社、1953(昭和28)年2月特大号<br>10 異様な犯罪動機「宝石」岩谷書店、1950(昭和25)年8―11月号<br>11 探偵小説に現われた犯罪心理「文化人の科学」、1947(昭和22)年3月号<br>12 暗号記法の種類「宝石」、1953(昭和28)年9・10月号「類別トリック集成」の一部<br>13 魔術と探偵小説「新青年」、1946(昭和21)年10月号<br>14 明治の指紋小説「宝石」、1950(昭和25)年12月号<br>15 原始法医学書と探偵小説「自警」、1951(昭和26)年9月号<br>16 スリルの説「ぷろふいる」、1935(昭和10)年12月号<br>「類別トリック集成」目次「続幻影城」早川書房、1954(昭和29)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,820 字 · 235 页
「僧正殺人事件」のディラード教授の心理はこれを一方の極にまでおしつめたものであって、数学と物理学と天文学の雄大無限の世界からみれば、地球上の道徳のごとき、人間の生命のごとき、問題とするに足らないという心理的錯覚にもとづく超絶的性格である。
ヴァン・ダインはファイロ・ヴァンスをしてその心理をこんなふうに説明させている。『数学者は光年という巨大なる単位によって、無限の空間をはからんとし、一方ではまたミリミクロンの百万分の一という極微の単位によって電子の大きさをはかろうとしている。彼らの見るヴィジョンはこの種の超絶的眺望であって、そのヴィジョンの中では地球やその住民はほとんど存在を忘れられてしまう。たとえばある種の恒星はわが太陽系全体の数倍の大きさを有するが、その巨大なる世界が数学者にとっては単に分秒の瑣末事にすぎないのだ。銀河の直径は、シャプレーによれば三十万光年である。しかも宇宙の直径となるとその銀河を一万倍しなければならない。
『だが、これらはホンの初歩の問題にすぎない。天文観測器に現われる日常茶飯事にすぎない。高等数学者の問題はさらにはるかに広大である。