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たんていしょうせつをつくってもらいたいひとびと

探偵小説を作って貰い度い人々

国枝 史郎

「探偵趣味」1926(大正15)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,658 字 · 4 页

青空文庫

だが同氏は何を書くにも、そこへ一理窟見付けないことには容易に筆を執ろうとはしない。しかし同氏は探偵小説には、以前から興味があった筈である。僕は既に五年程前に、同氏の口から聞いたように思う。五年間考えたらもう可かろう。そろそろ執筆して貰いたい。しかし同氏はどっちかというと、筆不精の方に属している。だから誰か同氏を進め、寧ろ同氏を鞭韃し、謂い得べくんば駆り立てなければ、或は筆を執らないかもしれない。あのダーウィンの進化論と、あのフロイドの精神分析学と、あの日蓮の折伏主義とを、混和させたような同氏の思想が、探偵小説に盛られたなら、新機軸を出すに相違無い。狛江村などに引っ込んで、晴耕雨読していずと、探偵小説を書いて貰い度い。

ウェルシイニンを賞揚した、前田河広一郎氏が筆を呵して、探偵小説を作ったなら、きっと素晴らしいものが出来るだろうと、僕は常に思っている。米国を舞台でも結構である。日本を舞台なら尚結構、あの力強い筆を以て、是非最近に作って貰いたい。同志とも云う可き平林氏は、既に処女作を発表した。いよいよ今度は前田河氏の番だ。

森下雨村氏が翻訳ばかりせずと、雑誌編集に没頭せずと、探偵小説の創作方面に、是非筆を執って貰いたい。