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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
ひろ子は、二階で、愈々どっさりになって来た布類、衣類の干ものをしつづけた。しげののつましい親たちが、何年か前にこしらえてやった派手すぎる銘仙の晴着や、結婚前の縫子の四季のよそゆき。紅絹がにじみ、染色の流れた若い女ものは、拡げて一枚干すごとにひろ子に哀れを感じさせた。直次とつや子、子供らのものはほとんど一枚も濡れなかった。
ひろ子が買って送った母の細かいお召の羽織がちぢみあがって黒く臭くなっている。それを軒下にほしていると、一段、一段、大儀そうな跫音をたてて母が二階へ上って来た。立ったままぐるりと、障子がはずされている両側の窓々と、その前にひろがる屋根の上とを眺めた。
「まあまあ、ようこんだけボロがあったもんじゃ」
煙草を吸わない老年の母は、こういうときひろ子同様、いくらか手持無沙汰らしく、そこにただ坐って見まわしていたが、やがて、
「ひろ子はんも、遠方来たのにえらい目見せて、ほん気の毒でありますよ」
と云った。
「どうして? お母さん。わたしは一番役に立たないから、却ってすまないと思っているのに」
「あんたがいるけに、どんだけ心づよいかしれん」
登代は、心に何か切ないものがあって、皆の働いている午後、こうしてひろ子一人の二階へ上って来た。