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ばんしゅうへいや

播州平野

宮本 百合子

「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页

青空文庫

「そんな誠意のない物の云いかたがあるか! みんな長い旅行で難儀しているんじゃないか。――中へ入って来、そして、説明したまえ」

あちこちから賛成の声が起った。暗いプラットフォームの屋根の下に停っている上、すべての乗客がざわついて立ち上っているためなお薄暗い車内に、その駅員が入って来た。そして、改めて、

「この列車は、水害のため、姫路止りであります。どなたもお降り下さい」

と告げた。乗客たちが駅員をとりまいた。が、結局、姫路の先の水害故障というのはいつ恢復するのか、どこの地点が故障なのかさえもはっきりしなかった。

「仕様がない、降りましょう」

背広も、合外套も渋い好みで、スーツ・ケースと大きいボール箱を下げたその男が、今度は新しい道づれに加った。

雨でよごれたプラットフォームに、覆布をかけた郵便行嚢の高い山がいくつも出来ている。ひろ子が、田原の家で、網走から解放されようとしている重吉のために書いた速達も手紙も、恐らくは、みんなこの湿っぽくて陰気な、いつ発送されるか見とおしもない郵便物の山につっこまれているのだろう。

プラットフォームは大体もとのままであった。