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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
もう一室、表側の室の復員兵たちと、ゆき来していて、なかに一人おっつぁん、おっつぁんと皆から呼ばれる、高声の慷慨家が交っていた。
ひろ子らがつくと間もなく、割烹服のかみさんが上って来た。宿帳をつけるでもなかった。
「ほんに、屋根の下にいるだけましと思っていただきます。御布団も何も疎開してしもうて、久しゅう廃業しとりますのに、皆さん、難儀なさかい、とめるだけ泊めえ、おっしゃりまして――」
三人分の米を出しあい、かみさんはそれをもっておりて行った。新しい道づれの持っていた大きいボール箱には、ひろ子の口に珍しい松茸がつまっていた。
「きょう中に大阪へつく予定だったんで、米をもっていません、すみませんが……あした何とかしますから……」
岡山から乗ったその男の松だけが、お菜になって出た。
膳が運ばれたとき、新しいつれは、
「どうです、一口」
そう云いながら立って床の間のスーツ・ケースをあけた。
「一口って――あるんですか」
支店長が、きらいでもなさそうに、そっちを見た。
「ありますとも。――私は、人の機嫌をとる商売でしてね」
アルコールの壜を出した。それを注いで水をわった。