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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
ひろ子は自分で、炊き上った飯を釜ごと二階へもち上った。急いで、食べ、あつい飯を二つの茶碗の間でころがし丸めて、握り飯をこしらえた。
勘定をはらって、雨こそあがったが、まだ十分晴天にもなり切っていない往来へ出た。橋の手前の横通りの出水はもうひいていた。白鷺城の濠に沿ってた大通りは、今朝も森閑として、長雨に洗い出されたかたい小石がちのひろい路が、清潔に寂しく通っている。
第一建物の店で、トラックの心配が出来るというのも、明石の手前が通れないというのなら現実性のないことである。結局、十一時に姫路を出て加古川までゆく汽車にのることとなった。
加古川から明石まで歩くとすれば七里あった。
「どうです、奥さんに七里歩けますか」
「七里はとても駄目ですね。――けれどもね、あなたは大阪までだから、明石まで七里、元気を出して一日にお歩けなさるでしょう。先へ行って下すって本当に結構です。おかげさまでどんなにかたすかったのですもの」
列車がひどくおくれているのに気をもみ、しきりに線路の前方をのぞきながら、善良な支店長は、更に一層明石までの道のりが、ひろ子に歩けそうもないことを苦にした。