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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
遮光笠の方は、物置部屋の背負籠のわきに半ば放りこまれた。それきりであった。
鮎沢の茶の間の笠は、そういう風には扱われてはいなかった。光をさえぎるようにこしらえられていたその笠を、夫婦で作り更えて、明るいための笠に直して使っている。
些細なことであるけれども、最近一ヵ月余り、周囲のあらゆる事々が、外からの力で機械的に、さもなければ無意識に、ただ変えられてゆくばかりなのを見て暮していたひろ子には、鮎沢夫妻が、こう変えて行くのだ、と自分たちの方針をきめて笠一つも独創しているのが快よかった。
八月十五日前後の東京には、田舎町にいたひろ子の知らない種々の現象が起伏し、その話もきいた。
「あの二三日で、東京中にしたらどれほどの書類をやいたんでしょう。あの風景だけは、ひろ子さんに見せておきたかったわ」
それらの激動の日に、いたるところの歩道へ、焼け焦げた紙片が散乱した。もんぺをやめた洋装の若い女が、高い靴の踵でその紙屑の山を踏みしだいて通った。
「でも、どうなるでしょうね」
「大局的にはポツダム宣言の方向さ」
雄治が、確信のある語調で篤子に向って云った。
「そりゃそうでしょう。