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ばんしゅうへいや

播州平野

宮本 百合子

「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页

青空文庫

京都から西を知らなかったひろ子にとって、柳井線沿線の景物は、目新しく映った。内海の色、波のないその海面にさかさに投影しているおだやかな山の緑。港の船の檣の林立と、帆が、布幅をたてに縫い合わされていて、絵にある支那の船の帆のようなのも、すべてが物珍しく映った。石がちの土質の白っぽさも、東北とは全く異って櫛比した町々の屋根、前に見える細い街路も面白かった。二人で来ることのなかった重吉の故郷の景色として、沿線の眺めはひろ子のこころに迫った。

石田の家のある駅にスーツ・ケース一つ下げて降りたとき、町には正月の粉雪がふっていた。ひろ子の髪や茶色の襟巻に白い雪の片がとまった。駅の名だけを重吉の親たちの手紙から覚えていたひろ子は、来て見れば、きくまでもないそこへの道を駅員にたずねた。そして、訪ねて行ったのであった。その頃重吉の家では、まだにぎやかに商売をしていた。米穀、油類、セメント、左官材料、薪、木炭、タバコ、塩。ほかに直次と進三がトラック運送に働いていて、仲仕が雇われていた。中風にかかっている父親もいくらか体の自由がきいていた。突然東京からひろ子が訪ねて来て、