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ぎたい

擬体

豊島 与志雄

「新潮」1952(昭和27)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,945 字 · 25 页

青空文庫

なにか下心あってしたことに違いない。」

青木は額に掌を当てて、回想してみた。あの時も、後で冷汗の出る思いだったが、今になっても、後味の悪さは同じだった。もっとも、すっかり酔っ払ってからのことだったので、詳しくは覚えていなかった。

あれはたしか、日米安全保障条約による行政協定が締結された頃のことだった。石村は主な社員たちを喜久家に招待して御馳走した。席上、石村一人が主として饒舌った。要旨は、アメリカ一辺倒に対する非難と、再軍備の主張だった。警察予備隊増員の計画もあるが、あのような組織では、たとえ如何ほど増員し、どのような装備をさしたところで、精神がだめだから、国防の万全を期することは出来ない。たとえ徐々にせよ、再軍備を行うことが、真に独立を確保する途である。それによって、たとえ徐々にせよ、アメリカ軍隊を撤退させるべきであって、何もかもそして常に、アメリカにのみ頼ろうとするのは、それこそ亡国根性である……。そのようなことを石村は威勢よく饒舌った。ふしぎに、憲法の改正とか日本共産党の問題とかは、一言も出なかった。皆が彼に相槌を打った。酒の勢も加わっていた。