轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

はせくらじけん

支倉事件

甲賀 三郎

「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页

青空文庫

「どうぞお通り下さいまし」

第一の難関は見事に突破された。彼はホッと息をついた。

通されたのは奥まった離座敷だった。六畳敷きほどの広さの小ぢんまりとした部屋は床の間の基督受難の掛軸や、壁間の聖母の画像や違棚の金縁背皮の厚い聖書らしい書物など、宣教師らしい好みで飾られていた。

やがて、ノッシ/\と現われて来たのは中肉中背ではあるが、褞袍姿の見るからに頑丈そうな毬栗頭の入道で、色飽くまで黒く、濃い眉毛に大きな眼をギロリとさせた、中世紀の悪僧を思わせるような男だった。

書店や車宿で大凡の風貌を聞いて想像していた石子刑事も彼を見ると稍たじろいだ。もし初対面で彼を見る人があったら誰が彼を宣教師と思う人があるだろうか。

「先生でございますか」

石子刑事は聞いた。

「支倉です」

彼は上座にむずと坐って爛々たる眼を輝かした。

「実は私は警察の者です」

石子刑事は寸刻の隙を与えず、然し平然と彼を見やりながら、

「玄関でそう申しては召使いの人に対して御迷惑と存じましたので態と申上げなかったのですが」

「はあ、警察の方が何の用事があるのですか」

流石に少し狼狽の色を見せながら彼は答えた。