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はせくらじけん

支倉事件

甲賀 三郎

「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页

青空文庫

二回目に発掘して来た白骨が小林貞と判明したか、自殺か他殺か区別がついたか、その鑑定の結果は後に述べる事として、一度神楽坂署の刑事部屋を覗いて見る事にしよう。

三尺の頑丈な戸口の外には出入する所のない、十畳敷ばかりのガランとした刑事部屋は、二方の窓から受入れる光線で割合に明るいが、誰でもこの部屋に入れられて、物凄い眼つきの荒くれ男に取巻かれて、鋭い質問を浴せかけられたら、怯じ恐れないものはないであろう。況して少しでも後暗い事のあるものは縮み上って、恐れ入るのが当然である。然し中には強情なしたゝか者があって、時には刑事達の手荒い取調べにも頑強に屈しないものがある。写真師浅田の場合はそれだった。

「それでは何だね、君はどうしても支倉の居所を知らないと云うのだね」

根岸刑事は大抵の人間ならその一睨みで、震え上って終いそうな冷いギロリとした眼でじっと対手を見据えた。

「知りません」

渡辺刑事初め二、三の刑事達に取巻かれた浅田は、浅黒い顔の些か血の気は失せていたが、平然として答えた。

「好い加減にしろ」

根岸刑事は責めあぐんだように、

「いつまで隠していたって仕方がないじゃないか。