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はせくらじけん

支倉事件

甲賀 三郎

「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页

青空文庫

僕は休息したいから、後を又石子達に頼む事としよう」

そう云いながら主任は力なげに出て行った。やがて、石子と渡辺が荒々しく這入って来た。

「おい、支倉」

石子はいきなり呼びかけた。

「未だ白状しないのか。往生際の悪い奴だ」

「いつまでも強情を張ると痛い目を見せるぞ」

渡辺は呶鳴った。

「支倉君」

根岸刑事が云った。

「この二人は若いから、ほんとに君をどんな目に遭わすか知れないよ。そんな詰らぬ目に遭ってから云うよりは、今云った方が好くないか。どうせ云わねばならぬ事だから、その方が得と云うものだぜ」

「得だろうが損だろうが、少しも知らぬ事は云えぬ」

夜は次第に濃くなって行く。ガランとした刑事部屋の真中に坐らせられた支倉の頭上には、高く薄暗い電燈が只一つ灯いているきりで、凹んだ眼、尖った頬骨、大きな鼻と凹凸の多い彼の顔にクッキリとした影をつけて、彼を一層物凄く見せていた。

「よしっ、そんならお前に見せるものがあるっ」

そう叫んで石子は何やら白いものを取り出したが、支倉は一目見ると、

「あっ」

と叫んだ。

支倉が一目見るより、あっと叫んだのは何事か。石子刑事の取り出したものは白く曝れた髑髏だった。