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はせくらじけん
支倉事件
甲賀 三郎
「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页
然し飜えって考えるに、彼は明治三十六年から明治四十年までは殆ど連続的に四回の窃盗罪を犯し、最後に二年の刑を受けて明治四十二年に出獄、明治四十四年にキリスト教の信者となったのであるが、彼の起訴された窃盗罪は大正五、六年に連続して行い、殺人は大正二年、第一回の放火は明治四十五年で、殆ど連続して犯意を以ているもので、毫も悔悛した所を認める事が出来ない。今回起訴せられた八つの罪の如きも、殆ど確実に之を犯していると思われるのである。
古我判事は沈思熟考の末、本事件に当るべきプランを樹て終った。彼はホッと溜息をついて、傍の冷え切った番茶をグッと啜った。
翌日出所した古我判事は直に本事件の参考人として、被告の妻静子、証人として小林定次郎、神戸牧師の二人を喚問する事を書記に命じた。
そうして一方では直に芝白金の支倉喜平の宅を捜査すべく手続をしたのだった。
大正六年三月二十六日午後予審判事、裁判所書記の一行を乗せた自動車は突如として支倉の家の前に止まった。
静子は子供を連れて外出していて不在だった。家には静子の母である老婆と、喜平の甥である少年とが留守をしていたが、判事は、物々しい有様にキョト/\としている二人を立会人として、家宅内全部を捜索して、聖書明細書、質物台帳、各一通、離婚届、建物譲渡に関する書類各一通、外に書状