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はせくらじけん

支倉事件

甲賀 三郎

「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页

青空文庫

支倉の第三回の訊問の五月二十三日まで凡そ四、五十日間に、彼は既に一度召喚した神戸牧師、小林定次郎を初めとして新に写真師浅田其他合計三十五名の証人を喚問した。その上に静子の母、中田かまを参考人として一回都合三十六回に渡って訊問を行なった。之らの調書を一々挙げるのは余りに煩わしいから省くけれども、概して支倉に不利なるものが多かった。

法治国に於ては法律の適用が頗る重大な結果を来すので、殊に刑法に於ては個人の利害に関する事多く、その為法官も出来るだけ慎重審議する。その結果罪の決定を見るまでには多大の時日を要する。断罪の遅延する事は屡※(二の字点、1-2-22)問題となり、既にシェークスピアの戯曲中のハムレット皇子が厭世観に捕われて、自殺せんかと思いつめた時に、厭世観を誘う一つの原因のうちに法の遅滞と云う事を数えている。

然し今こゝに古我判事の周到なる訊問振りに直面すると、法の遅延などと云う事に不平は洩らせなくなる。もとより古我氏のみならず、すべての判官はいずれも古我氏に優り劣りのない取調べをした上でなければ断罪に至らないに違いないのだ。

余談は置いて、五月二十三日喜平第三回の訊問に取りかゝろう。