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はせくらじけん
支倉事件
甲賀 三郎
「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页
この木藤と云う人は後に分ったのであるが、廃娼運動の急先鋒で、遊廓で廃娼演説をやったり、娼妓の自由廃業を援助したりして、楼主側から非常な圧迫を受けた。然し毫も屈しないで運動を続け、或時は暴力団に包囲されて、鉄拳で乱打されたり、時には無頼漢に匕首を擬して追われたりした、真に死生の間を潜り抜けた勇烈の士だった。
彼はずんぐりした短躯で、見るから頑丈そうな、士官の制服が窮屈そうに見える人だった。
「やあ、初めまして」
木藤は座に着くが早いか、元気よく挨拶をした。
「初めまして」
神戸牧師は丁寧に礼をした。
「中々暑うございますねえ、先生の方の御仕事はいかゞですか。我々の方はこう暑いと骨が折れますよ」
「そうでしょう。あなた方のお仕事は大変でしょう。我々の方は仕事と云っても別に変った事はありません。お恥かしい位です」
牧師は謙遜した。
「いや、我々の方も一向駄目です、思うように行きません」
元気な救世軍士官は汗を拭き/\、
「所で今日突然お伺いしましたのは、支倉喜平の事でお願いに出たのですが」
「はあ」
牧師は暑さで上気した相手の顔を見た。
「私はその、他の用で東京監獄に行きましてね、ふと支倉に呼び留められて、だん/\話を聞いたのですが、あゝ彼の云う事が全部事実だかどうか分りませんが、可哀そうな者だと思われますので、実はお願い