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はせくらじけん
支倉事件
甲賀 三郎
「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页
而も自分は捕われの身である。彼は生きながらの呪いの魔となるより途はなかったのだ。
彼の呪いの目標は何と云っても神楽坂署長庄司だった。彼は物凄い脅迫の手紙を絶え間なしに送った。庄司署長の手許に届いたものだけで前後七十五本を算し、その外いかにして探ったか、署長の親類姻戚関係を辿り、罵詈を極め、果は署長の出身小学校、中学校、戸籍役場より、其他関係しているあらゆる会にまで手を延ばし、甚だしきは署長夫人の出身女学校の校長にまで魔手を及ぼした。夫人の実家へ舞い込む頻々たる脅迫状に、当時奉公中の下女が顫え上って暇を乞うて逃げ出したと云う事もあった。
監獄内からの発信は典獄に於て一々点検して、不穏なものは発信せしめない事になっていたのだが、検閲係りも多い中とて、つい疎漏に流れたと見える。
然し、支倉の書信は全部許可された訳でなく、可成り発送止めになったのだった。それを以て見ると彼がどんなに多くの手紙を認めたか想像に余りある。彼は検閲に不満を抱きこんな上願書を典獄に出した。
「お願い申すのは甚だ恐れ多い事ですが、私から外へ出す書信を御不許可に遊ばす際にはこの所此の所が悪いから不許、この所を抹消したなら発信を許可してやると云う事に、一寸お印をおつけ頂き、そこを抹消したなら発送を御許可しいたゞけますよう、此所上願書を以て及上願