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はせくらじけん

支倉事件

甲賀 三郎

「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页

青空文庫

「ふん、そんなにはっきり分ったのかい」

「いゝえ、極めて不鮮明なんです。本の字と米だか林だかハッキリしない字と川の字、それから何とか内写真館と読めただけでした」

「書損いの封筒の前にそれを見たんだね」

「そうです。奴が郵便を書終ると例の如く自分で入れに行きましたから、私は直ぐに二階に駆け上って、吸取紙を見るとそれだけの事が分ったのです」

「それから」

「もっと委しく判読しようと一生懸命になっていると、おかみさんが上って来たのです。おかみさんを好い工合に胡魔化して下へ降りると、奴が帰って来ましてね、直ぐ二階に上りましたが、暫くすると私を呼んで之から現像を始めるから、そこいらを片付けて置けと云って暗室へ這入ったのです。片付けているうちに屑籠の封筒が眼についたのです」

「君に片付けろと云って暗室へ這入ったのだね」

徒労

聞いていた石子は咎めるように云った。

石子の咎めるような語勢に岸本は吃驚したように答えた。

「そうです」

「そりゃ君、少し考えて見たら分るじゃないか」

石子は噛みつくように云った。

「いゝかね、ふだん非常に用心深い男がだね、書損いの手紙を屑籠に投げ込んで、それから君に掃除しろと云うのは可笑しいじゃないか、え、第一君を呼んで態※(二の字点、1-2-22)掃除さすのにだね、屑籠の中に重要な手紙の這入っ