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しなまいのふくろ
支那米の袋
夢野 久作
「新青年」1929(昭和4)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,357 字 · 50 页
ええ……妾思い切り打ってやったわ。ヤングなら背中に鞭の痕が付いていても誰も気付かないでしょうし、妾も自分でいじめられる気持ちよさを知っていたんですからね……イイエ、音なんかいくら聞こえたって大丈夫よ。妾ヤングから教わった通りに呑気そうに流行歌を唄いながら、その調子に合わせて打っていたから、外から聞いたって何かほかのものをたたいているとしか思えなかった筈よ。……でも、そうして寝台の上に長くなっているヤングの脂切った大きな背中を、小さな革の鞭で、力一パイにたたいている間の気持ちのよかったこと……打てば打つほどヤングが可愛いくなって来てね……そうしてもう、ヤングと一緒に亜米利加へ行ったら、そんな遊びが本式に大ピラで出来ると思うと、楽しみで楽しみでたまらなくなっちゃったの。だから……妾は毎晩そんな遊びをする時間をすこしずつ裂いて、ヤングを先生にして一生懸命に亜米利加の言葉を勉強し続けたのよ。
妾は言葉を覚えるのが名人なんですってさあ。ヤングがビックリしていた位よ。ヤングとこんな話が出来るようになる迄でには一と月とかからなかったし、水兵さん達と悪態のつきっこをする位の事なら、初めっから訳なかったわ。