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ほうろう

放浪

織田 作之助

「文學界 第七年第五号」文藝春秋、1940(昭和15)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,614 字 · 47 页

青空文庫

言うも甲斐ない意見だったが、やはり、私に頼らんとやって行く甲斐性を出してくれへんのかとくど/\意見し、七円恵んでくれた。懐からバットの箱を出し、その中に金をいれて、しまいこみながら、涙を出し、また、にこ/\と笑った。浜子と別れると、あまい気持があとに残り、もっと/\意見してほしい気持だった。玉江橋の近くの飯屋へはいって、牛丼を注文した。さすが大阪の牛丼は真物の牛肉を使っていると思った。木下の屋台店で売っていた牛丼は、繊維が多く、色もどす赤い馬肉だった。食べながら、別府へ行けば千に一つ小鈴かオイチョカブの北田に会えるかも知れぬとふと思った。

天保山の大阪商船待合所で別府までの切符を買うと、八十銭残ったので、二十銭で餡パンを買って船に乗った。船の中で十五銭毛布代をとられて情け無い気がしたが、食事が出た時は嬉しかった。餡パンで別府まで腹をもたす積りだった。小豆島沖合の霧で船足が遅れて、別府湾にはいったのはもう夜だった。山の麓の灯が次第に迫って来て、突堤でモリナガキャラメルのネオンサイン塔が点滅した

船が横づけになり、桟橋にぱっと灯がつくと、あっ! 順平の眼に思わず涙がにじんだ。