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こきょうをおもう

故郷を想う

金 史良

「知性」1941(昭和16)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,586 字 · 5 页

青空文庫

こういうところからして、私と彼女の間に於る姉弟の情にも又特別なものがあったと云える。私が帰る頃を聞き知って真先に母の許へやって来て待ってくれたのもこの姉だった。そして私が林檎好きだと彼女は勝手にきめて、いつも国光に紅玉など水々しくて色のよい甘そうなのを一抱えずつ買って来てくれた。彼女の死が老母に与えた精神的な打撃というものは余りにひどい。正にその次は自分位であろうとひとりよがりに考えて、少しでも余計に悲しもうとする私である。その姉が今度帰ればもういないのだと思うと、丈夫な歯が抜けたように心の一隅が空ろである。

それでもやはり故郷への帰心は抑え難くはげしい。これは一体どうしたものだろうか。左程に故郷を恋しく思わない友人達を見る度に、私はむしろ羨しくなり又自分をはかなく思うのである。此頃も私の家では母と京城の専門学校から戻って来たばかりの妹が二人きりで侘しく暮していることであろう。先日の妹の手紙には、私の帰って来るという四月は平壌の花植時だからその時揃って庭いじりをしましょうと書いてあった。私は丁度その先便で母や妹宛に、今度帰って行くことにしたから、裏庭にはあきれる程までにトマトを植え、井戸の上には藤棚をしつらえ、私のささやかな書斎の前にはヘチマを上げるように、そして前庭には絵屏風となるまでに朝鮮朝顔をと