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きょういくえいがについて

教育映画について

寺田 寅彦

「公民教育」1932(昭和7)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,491 字 · 9 页

青空文庫

しかしうかうかしていると、色々な妙な思想がフィルムの形になって外国から続々入り込んで全国に燃え拡がるのは事実である。

現代一部の日本人をすっかりヤンキー化させたものはほとんど全く映画の力だと云っても誇張ではあるまい。実に恐るべきことである。それだのに我国の文教の枢府ではこの事実に無神経である。

映画などは不良少年少女の見るものであるといったような時代放れのした気持が、いわゆる教育家や、特に真面目な中堅人士の間にいくらかでも残っている間は教育映画の時代は廻って来ないであろう。現在の映画ファンの中の堅実な分子の中から総理大臣文部大臣以下各局長が輩出する時代が来て始めて私の夢は実現されるかもしれない。しかしそういう日の来ないうちに不良映画の不良教育を受けた本当の不良が天下を溺らすようにならないとは限らない。そうならないためには、今から教育者の地位にある当局者は、この眼前の生きた現象を徒に回避する代りに、これに直面してもう少し積極的な手段を取るべきではないか。あえて本誌の読者の一考を煩わしたいと思った次第である。(昭和七年八月『公民教育』)