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もじか
文字禍
「文学界」(「古譚」の題で)1942(昭和17)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,454 字 · 13 页
文字の霊が、この讒謗者をただで置く訳が無い。ナブ・アヘ・エリバの報告は、いたく大王のご機嫌を損じた。ナブウ神の熱烈な讃仰者で当時第一流の文化人たる大王にしてみれば、これは当然のことである。老博士は即日謹慎を命ぜられた。大王の幼時からの師傅たるナブ・アヘ・エリバでなかったら、恐らく、生きながらの皮剥に処せられたであろう。思わぬご不興に愕然とした博士は、直ちに、これが奸譎な文字の霊の復讐であることを悟った。
しかし、まだこれだけではなかった。数日後ニネヴェ・アルベラの地方を襲った大地震の時、博士は、たまたま自家の書庫の中にいた。彼の家は古かったので、壁が崩れ書架が倒れた。夥しい書籍が――数百枚の重い粘土板が、文字共の凄まじい呪の声と共にこの讒謗者の上に落ちかかり、彼は無慙にも圧死した。
(昭和十七年二月)