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ぶんがくとちほうせい
文学と地方性
宮本 百合子
「文芸」1940(昭和15)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,647 字 · 11 页
この間或る必要から大変おくればせに石坂洋次郎氏の「若い人」上下を通読した。この作品が二三年前非常にひろく読まれたということも、今日石川達三氏の「結婚の生態」がひろく読まれているということと対比してみれば、同じような現象のうちに全く異う要素をもっていることで興味ふかく感じた。「若い人」が一般に読まれた要素の一つには、「結婚の生態」が今日よまれている要素と同じ種類のものもある。ごくつづめた言葉でそれをエロティックな要素と表現すると、「若い人」が『三田文学』に連載されやがて一般の興味をひきつけた時代には、そのエロティシズムも、少女から脱けようとしている特異な江波の生命の溢れた姿態の合間合間が間崎をとらえる心理として描かれており、皮膚にじっとりとしたものを漲らせつつも作者の意識は作品としてその虚々実々を執拗に芸術として描き出そうと力一杯の幻想も駆使している。
ちょうど生命の行動性が文学の上で云われたり、人間まるむきの姿というものが求められていた時期に石坂氏の努力は文学そのものの在りようとしてやはり当時の気持に触れたところがあったろうと肯かれる。文学作品として、そして通俗性にもひろがった作品として、石坂氏の今日の一連りの作品の先駆的なものとなった。