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ぶんげいのてつがくてききそ

文芸の哲学的基礎

夏目 漱石

文艺创作有没有哲学根基?夏目漱石从自身经验出发,探讨文艺的本质和意义,引人深思。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,519 字 · 98 页

青空文庫

情を働かして生活したい、知意を働かせたくないと云うのではないが、情を離れて活きていたくないと云うのが我々の理想であります。しかしただ「情が理想」では合点が行かない。御互になるほどと合点が参るためには、今少し詳細に「情を理想とする」とは、こんなものだと小かく割って御話しをしなければなるまいと思います。

情を働かす人は物の関係を味わうんだと申しました。物の関係を味わう人は、物の関係を明めなくてはならず、また場合によってはこの関係を改造しなくては味が出て来ないからして、情の人はかねて、知意の人でなくてはならず、文芸家は同時に哲学者で同時に実行的の人(創作家)であるのは無論であります。しかし関係を明める方を専らにする人は、明めやすくするために、味わう事のできない程度までにこの関係を抽象してしまうかも知れません。林檎が三つあると、三と云う関係を明かにさえすればよいと云うので、肝心の林檎は忘れて、ただ三の数だけに重きをおくようになります。文芸家にとっても関係を明かにする必要はあるが、これを明かにするのは従前よりよくこの関係を味わい得るために、明かにするのだからして、いくら明かになるからと云うて、この関係を味わい得ぬ程度までに明かにしては何にもならんのであります。