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ぶんげいじひょう
文芸時評
宮本 百合子
「東京朝日新聞」1932(昭和7)年1月28~31日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,930 字 · 16 页
1、2、と読み進むにつれ、映画のクローズ・アップのように一連の文句が目の前に浮び上った。労農大衆党の黄色い卑屈なスローガン「戦線拡大反対」という文句だ。
作者が大いに視察記録しようと出かけた意気込みは、ほのかに分る。が、いざ実際、組織強固な帝国主義侵略軍の間にもまれて見ると、彼がどんなに内心びっくりし、臆病になり、完全にファッシズムに降参してしまっているかが文章の間からうかがわれる。
賑やかで、何だか素晴しいようで、叫びや旗に満ちているのは満鉄付属地内だけだ。一度列車が、その外に出ると、そこにあるのは「無関心な、敵意も反抗もない真黒い無数の中国人」だ。
ファッシズム文化の特色である独善的な民族主義の立場から、筆者は「中国人の平気さにはあきれる」などというが、さすがに、時々はそこから「抵抗のない、無限の抵抗を感ずるのだ。たしかに中国人(!)は底の知れない深さと底力をもっている」ことに圧迫をうける。しかし、その中国人、正しくは中国のプロレタリアート・農民に対して、筆者をこめての武力的侵害者の一団が、どういう関係にあるかということは、一言もふれられていない。