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ぶんげいじひょう

文芸時評

宮本 百合子

「東京朝日新聞」1932(昭和7)年1月28~31日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,930 字 · 16 页

青空文庫

のだ。いつかまた人間は「もと来たこの道を逆に引きかえして行くようになるかもしれない」といっている。物質のもとは不滅であるという唯物論的一元論を、川端康成は、この作品中で七生輪廻や転生の可能へねじまげてしまっている。

よしんば、作者自身龍江ほどそれを現実としては信じないまでもこういう霊界物語にひどく「抒情歌」の美を感じ、その美をとぎあげてこの一篇の小説の中へ盛りこもうとした情熱だけは、まがうかたなく感じられる。

「水晶幻想」時代にでも、現実の激しい社会生活から遊離した川端康成の主観玩弄の癖は一つの特徴だった。有閑なブルジョア・インテリゲンチアらしく脳みそは一秒間にどれだけ沢山のものを連想し得るかを暇にまかせて追求し主観の転廻のうちに実現と美を構成しようとしたのが「水晶幻想」であった。

現実逃避の文学

――神秘主義とファッシズム――

「水晶幻想」と「抒情歌」との間には一年の歳月が流れている。しかも一九三一年は、日本をこめて資本主義世界の一般的経済恐慌が、金融恐慌にまで発展したすさまじい一年間だった。

特に一九三一年の後半期は、ブルジョア独裁がブルジョア文化の全機能をひきいてはっきりとファッショ化した点で、日本の歴史的モメントであった。