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ぶんげいじひょう

文芸時評

宮本 百合子

「東京朝日新聞」1932(昭和7)年1月28~31日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,930 字 · 16 页

青空文庫

によって、独特な抒情性のきよらかさと描写の美しい明瞭さを高く評価された。一九三二年「抒情歌」の書かれる前後、この作家は新感覚派に属していた。一九三一年の「水晶幻想」はこの作家の創作系列の中で風の変った一作であり、新感覚派的手法の試みであり、またこの作家の資質にとって不自然な作品の一例とみられる。「水晶幻想」は即物的な表現のうちに、素朴な唯物的実在の感覚と心理のニュアンスを綯いあわせた、というよりもむしろ配列した頭脳的な作品であった。が、「抒情歌」はその反対に、科学を追いつめて淋しくなった人間の心が、その逆の霊魂のことに慕いよる、というモティーヴによってかかれている。これは「水晶幻想」の作者として一つのリアクションを示した作品であった。「水晶幻想」と「抒情歌」の間にあるこの性格は折から一九三一―二年のプロレタリア文学運動の高まりとその弾圧を背景として、ただこの作家ひとりのモティーヴが、あれから、これへ、とびうつったこととしてだけは見られない。文学史的な客観において、この二作は、一つの研究の対象ともなり得る。当時のわたしが「抒情歌」の異常な心霊ごのみに、同感できなかったのは、あながち、わたしのおさなさと素朴な世界観、文学からだけのことでなかった。