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どうじ
文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子
室生 犀星
室生犀星『文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子』。同一底本的分册已合并为一书。收入:童子、ゆめの話、あじゃり、蛾、幻影の都市、香爐を盗む、三階の家、しゃりこうべ、天狗、童話、後の日の童子、不思議な国の話、不思議な魚、みずうみ。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,454 字 · 357 页
」
おあいが恁ういうと、そとでは、静かに音もしなかった。が、やさしい女らしい声で、透きとおるように言った。
「夜中おさわがせいたしまして相すみません。じつは。」
潜り戸ががっちり開いた。おあいは、手燭で往来の方をてらした。そこには、町家の内儀らしい女中が白い顔をほんのりと浮しながら佇んでいた。
「寝入りばなだったもので、つい、おまたせして済みません。いまごろどちらからいらしって――。」
おあいは、内儀の顔があまりに鮮かで、美しく整いすぎているのに、ひやりと、心臓のあたりを一と撫でせられたようで、小震いをした。髪の地も、高い鼻がなまなましく細づくりで、それが、一番はじめに目にはいった。
「ちょいと手燭をかして戴けないでしょうか。大切なものを取落しましたので、」内儀は、そういうと足もとを捜しはじめた。
「それはお困りでしょうに、お品物は何でございますかしら。」
おあいは、落し物なら夜中に起さなくともいいのにと、ふいに、内儀のうつむいている腰のあたりを見ると、金繍のある立派な夏帯の上に、どこからきて止ったものであるか、一疋の仄白い毒々しい夜の蛾が、ぼんやり手燭にぼやけて烟ってみえた。