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どうじ
文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子
室生 犀星
室生犀星『文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子』。同一底本的分册已合并为一书。收入:童子、ゆめの話、あじゃり、蛾、幻影の都市、香爐を盗む、三階の家、しゃりこうべ、天狗、童話、後の日の童子、不思議な国の話、不思議な魚、みずうみ。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,454 字 · 357 页
ではお休みなさいまし。」
内儀は、暗い裏町を歩いて行ったが、気になっておあいは潜り戸から顔を半分出して、暗いなかにもっと暗みある影を眺めていた。いったい何を落したのか、それも言わないで夜中に変な人だと聞耳をすますと、もう小路を曲って行ったのか、足音もしなくなっていた。
玄関の引戸を引こうとすると、白い蛾が、さっきの蛾かも知れないやつが、ぱたぱた、手燭の方形に吐き出したあかりをぐるぐる廻った。
「しっ。」こんどは、襟首にきた。
しかたなしに手燭を吹き消した。もとの行燈のところへくると、はじめて、はっと気がついて帯の間に手をいれてみると、さっきの櫛が失われずにあった。その瞬間におあいは思いあたって吃驚した。それと一しょに、寒さと震えが歯と膝がしらへしがみついた。
「しかしそれは気のせいにちがいがない。まさかあの内儀ではあるまい。」
おあいは、細帯一つになって、燈心をほそめ、櫛は、行燈台の小抽斗にいれた。そして床にはいったが…………そのとき、ふいに目をさました。
枕もとには、れいの行燈がぼんやり点れたきりで、堀も、深寝をしているらしく鼾さえかかなかった。惶てて行燈の小抽斗を開けてみると、寝る前に入れたとおりに櫛がしまわれてあった。