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どうじ

文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子

室生 犀星

室生犀星『文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子』。同一底本的分册已合并为一书。收入:童子、ゆめの話、あじゃり、蛾、幻影の都市、香爐を盗む、三階の家、しゃりこうべ、天狗、童話、後の日の童子、不思議な国の話、不思議な魚、みずうみ。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,454 字 · 357 页

青空文庫

かれは昼間も、この騒騒しい公園の池のほとりに置かれたベンチの上に坐っていた。かれが二度目に例のふしぎな女を見かけたのは、この池のまわりであったのである。

殆どいちように、このベンチに集まるひとびとは、みな疲れ込んで、なりも汚れていたし、顔という顔には当然現われるべき疲労と倦怠、つぎには悲しげな苛苛した貧しさをたたえていたのである。あるものは、電車の乗かえ切符を手にもちながら、それをどれだけ細かく引裂けるものであるかということを試すもののように、タテに裂いたり横にちぎったりしながら、ぼんやり池一つへだてて通りを眺めているものもいたし、なかにはつきを膝の上でやりながらぼんやり失神したように或一点をながめくらしているものも居た。なかには講談をよんでいるのも居たが、どれもこれも、となり合ったベンチの上にいながら、お互いに話をしようとするものがなかった。そういうことに興味をもたないもののように見えた。かれらは、お互いに人目を盗んでは煙草をひろい合うか、べつに何ごとかを深く考え込んで、根が生えて立てないようにも見えた。

かれは、そこにある池のなかにいる埃と煤だらけの鯉をながめていた。