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どうじ

文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子

室生 犀星

室生犀星『文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子』。同一底本的分册已合并为一书。收入:童子、ゆめの話、あじゃり、蛾、幻影の都市、香爐を盗む、三階の家、しゃりこうべ、天狗、童話、後の日の童子、不思議な国の話、不思議な魚、みずうみ。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,454 字 · 357 页

青空文庫

その息づかいは平和にわたしの耳をなごめた。

………わたしだちは四年前の冬、結婚した。その晩は珍らしい大雪の翌日で、夜中に、雨戸一枚を繰り手洗鉢にかがんだが、銅の手杓も凍てあがっていた。何となく青い層のある明け方の空気を雪と雪とが射し合い、その明りはむしろ痛みある寒さを感じさせた。私はそこでしばらく佇ちながら、すやすや眠っているらしい女に、私がそうやって佇っていることを知らすまいと、凍った閾の上に音もなく雨戸を閉めた。

式を済すと、田端と神明町さかいの、或る百姓家の離れに住み、私は毎日抒情風な詩ばかり書いていたが、蟻の餌ほどの父が残して行った金なぞは、何時の間にかなくなっていた。貧しい地味な暮しをつづけているうちにも、すこしずつ自費の詩集なぞが売れて行った。まとめて父からの金で、私は十年ほどかかって書いた詩を書物にし、本郷の本屋へたのんで売ってもらっていた。

そのころもう父親になっている恩樹という友だちが、やってくるごとに、三つばかりの女の子を抱いていた。私には恩樹がその子どもを得意そうに抱いたり、あやしたり、おしっこをさせたりしているのを見るごとに、いつもばかばかしい気がした。