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どうじ
文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子
室生 犀星
室生犀星『文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子』。同一底本的分册已合并为一书。收入:童子、ゆめの話、あじゃり、蛾、幻影の都市、香爐を盗む、三階の家、しゃりこうべ、天狗、童話、後の日の童子、不思議な国の話、不思議な魚、みずうみ。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,454 字 · 357 页
かれは、これらの不思議な場面に、胸を小突かれてなお暫く立ち止っていると、どこから現われてきたのか、一人の運転手が自動車のそばへ近づくと直ぐに運転台に上ったのである。間もなく、このあやしげな自動車はゆるゆると動き出して、俵町の方へひと廻りすると、やや早く馳り出した。と見る間にその自動車はかげのように消えてしまったのである。
かれは人家の隙間から飛び出すと、何気なく自動車のタイヤのあとを見たりしていたが、又ぼんやり歩き出した。かれは眼底にうかんでくる様様な映像に悩まされながら、脳は重く心は疲れていた。かれ自身が何故に忌わしいこの巷の毎夜をぶらつかなければならないかということも、又そうすることに依って彼自身の内部が益益荒頽してゆくことをも考えなかったのであった。かれは、総ての荒んだ独身者や失業者、また一切の無能者の当然辿るべき道を歩いているに過ぎなかったのである。
かれは間もなく、殆ど幽霊のように樹立から樹立を縫いながら公園をあるいていた。かれ自身何の目的もなく、多くの用なしとともに其処のベンチにもたれていたのであった。かれの前から半町ほどさきから、かれが曾つてきき覚えのある唄い声がきこえてきた。