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どうじ

文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子

室生 犀星

室生犀星『文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子』。同一底本的分册已合并为一书。收入:童子、ゆめの話、あじゃり、蛾、幻影の都市、香爐を盗む、三階の家、しゃりこうべ、天狗、童話、後の日の童子、不思議な国の話、不思議な魚、みずうみ。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 177,454 字 · 357 页

青空文庫

そこは恰度玉乗小屋の前で、すれちがいに行く女がいた。紛うかたもない例の女のすらりとした姿で、頸首もすっきり白く浮いていた。

「あの女が行く。何んという変な晩だ。たしかにあれにちがいない。」と歳太郎は叫ぶように言った。

かれはその時総身に或るふしぎな顫律をかんじた。かれの眼にもはっきりとその姿が見えたからであった。どこか西洋人のような足早に歩いてゆく姿は、いつかの待合の小路で見たのと少しも異ったところが無かった。併し彼の女が生ているわけがない。あの女はたしかに投身したのだ。と思っても、やはり似ていた。かれは歳太郎の言葉をさえぎるようにして、

「あの女が歩いている筈があるものかね。いま時分、しかも死んでしまったものが歩いているものか。」

歳太郎は胸をどきつかせながら呼吸をきらして、

「しかし変だ。たしかに似ているのだ。」

と、またあとを振り顧った。群衆は絶え間もなく、つぎからつぎへと動いていた。一とところに溜るかと思うと流れ、流れるかと思うと、それが又ぞろぞろと溜ったり澱んだりした。

かれは、そのとき突然にある思念に脅やかされた。若しも、ひょっとすると……と思いながら口を切った。